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INDEX

  • 1編成当たり1000席を超える新幹線の車両は、車椅子用スペースが2席から6席に増やされる。
  • 政府及び鉄道事業者は、助けが必要な人への声かけを一般利用者にも行ってもらうため、駅掲示のポスターをもって促進

March 2021

鉄道のバリアフリー化

1編成当たり1000席を超える新幹線の車両は、車椅子用スペースが2席から6席に増やされる。

日本では、高齢者、障害者等の移動を円滑にするために、公共交通機関のバリアフリー*の推進に取り組んでいる。それによって、誰もが快適かつ安全に移動できる、共生社会の実現を目指している。

政府及び鉄道事業者は、助けが必要な人への声かけを一般利用者にも行ってもらうため、駅掲示のポスターをもって促進

日本では、建築物や公共交通機関のバリアフリー化を推進すること等の必要性から、2006年にいわゆる「バリアフリー新法」が制定された。その法律に基づいて、国、自治体及び全国の鉄道事業者は、駅構内における段差解消を目的としたエレベーターの整備、バリアフリートイレの設置、視覚障害者を適切に誘導するための視覚障害者誘導用ブロック(視覚障害者を誘導するために床面に敷設したもの)の設置など、多岐にわたるバリアフリー化を進めている。

国土交通省鉄道局技術企画課の猪木勇至さんは「2020年3月末時点におけるデータとして、日本全国で約9500ある鉄道駅のうち、優先的にバリアフリー化を進めている1日当たりの平均利用者数が3,000人以上の駅が3,580あり、そのうち91.8パーセントで段差が解消されています。また、視覚障害者誘導用ブロックでは95.1パーセント、バリアフリートイレでは88.5パーセントの駅でそれぞれ整備が完了しています」と説明する。

また、近年は視覚障害者などが駅のホームから転落する事故を防ぐホームドア設置も進められ、2019年度末までに全国858駅でホームドアが整備されている。しかしながら、その設置には多くの費用と時間がかかるため、政府及び鉄道事業者は、視覚障害者への声かけを、駅員のみならず一般利用者にも行ってもらうよう、ポスターや車内アナウンスによりはたらきかけるとともに、ITやセンシング技術を用いた転落防止対策についても検討している。

2020年12月には、2021年からおおむね5年に及ぶ次期目標を含めた新たな「移動等円滑化の促進に関する基本方針」が策定された。これに基づき、さらに鉄道のバリアフリー化が推進される。新たな目標では、現行目標である1日あたりの平均利用者数3,000人以上の駅に加え、自治体が作成する基本構想の生活関連施設に位置付けられた1日の平均利用者数2,000人以上3,000人未満の駅も対象に100パーセントの段差解消を始めとするバリアフリー化を目指す。さらに、大規模な駅では障害者の安全で円滑な移動のため複数のバリアフリールート(車両の乗降口から駅の出入口まで円滑に移動できる経路)の整備も進められる。

また、新幹線では「世界最高水準のバリアフリー環境を有する高速鉄道」の実現を目指し、2019年12月に鉄道事業者、障害者団体などからなる検討会を立ち上げ、バリアフリー対策の見直しを進めてきた。現在の新幹線の車椅子スペースは1編成当たり1席又は2席であり、車椅子使用者のグループでの乗車はできない。また、ウェブ上で車椅子シートの乗車申込みはできるが、購入手続まで完結せず乗車前に駅の窓口で発券しなければならないことから、障害当事者団体の方々などからはウェブ上で予約、購入が完結できるシステムの導入を求める声があげられている。このため、1編成当たりの座席数に応じて、3~6席の車椅子スペースを設定し、車椅子使用者のグループでの乗車、ストレッチャー式車椅子使用者と介助者などに対応することができる車椅子用フリースペースを導入するとともに、ウェブ上でその予約・購入が完結するシステムの導入等が検討されている。

円滑な移動を確保する環境整備の推進において、高齢者や障害者が自立して生活するという重要性を考慮することは、人々の活動と活躍の幅を広げることにもつながる。

* 障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、もともと住宅建築用語で登場し、段差等の物理的障壁の除去をいうことが多いが、より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられる。

鉄軌道駅におけるバリアフリー化の推移