September 2022
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北海道・旭岳の紅葉
真っ赤に紅葉したチングルマ ロープウェイからの秋の旭岳斜面の眺め
標高約1100メートル地点の山麓駅から1600メートルの姿見駅までを約10分でつなぐ、大雪山旭岳ロープウェイ

全国的にまだ残暑が厳しい9月中旬、北海道の旭岳(あさひだけ)は、広葉樹林と高山植物が紅葉し、日本で最も早く色づく。

日本でもっとも早く紅葉が始まる場所として知られるのが、北海道中央部に位置する大雪山(だいせつざん)国立公園である。標高2000メートル級の山々が連なる大雪山系の主峰である旭岳(活火山、標高2,291メートル)は、9月中旬ごろから山肌のウラジロナナカマドやチングルマ*の葉が黄色、赤色に染まり始める。ロープウェイに乗りたどり着いた標高1600メートルの姿見エリア近くでは足元に広がる高山植物の紅葉の色づきを楽しむことができる。
「北海道は緯度が高く、標高1600メートル地点は森林限界(木が生育する場所の端)のため、旭岳中腹には高い木がないので視界が開けています。足元の高山植物が次々に紅葉すると、大地が赤や黄色の絨毯(じゅうたん)で敷きつめられたように見えます」と、ひがしかわ観光協会のウィルコック香奈子さんは話す。「雄大な旭岳の姿とその裾野に紅葉が広がり、それらはほかにない絶景です。早朝、ロープウェイで雲海の間を通り抜けると、目の前に紅葉が現れるというドラマチックな絶景を見ることもあります」
中でも旭岳中腹に群生するチングルマは、秋になると真っ赤に紅葉して景色を一変させる。このチングルマは、夏には白い可憐な花を咲かせ、他の高山植物の花々とともに、“天空の花畑”と呼ばれる楽園のような光景を見せる。北海道に古くから暮らすアイヌの人々は、この場所を“カムイミンタラ”(神々の宿る庭)と呼び大切にしてきたという。
一年を通じて運行される大雪山旭岳ロープウェイは、標高約1100メートル地点の山麓駅から1600メートルの姿見(すがたみ)駅までを約10分でつなぐ。姿見駅から続く約1.7キロメートルのトレッキングコースがあり、1時間ほどで一周できる。

「コースの南側を行くと、正面に旭岳を見ながら散策できるのでおすすめです。周遊コース内にある姿見の池のあたりでは、ジェット機のようなゴーッという音とともに水蒸気が立ち上る噴気孔を間近に見られ、生きている大地の迫力を感じられると思います」とウィルコックさんは話す。
ところどころ噴煙を上げる山容と、チングルマの赤い絨毯が織りなすコントラストの旭岳中腹。この地ならではの秋の美景である。
紅葉と同じ時期、例年9月下旬には初冠雪が降る。紅葉と雪を同時に楽しめるときもあるという。
* 草ではなく、高さ10センチメートルほどのバラ科の小低木