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September 2022

食品ロス削減の取組

  • 日本アクセスはフードバンク団体に食品を寄贈している。
  • 消費者庁は消費者向けのウェブサイト「めざせ!食品ロス・ゼロ」を開設し、啓発に努めている。
  • 2022年度の食品ロス削減月間啓発のポスター。日本の食品ロス量(年間522万トン)を国民一人当たりで換算すると、毎日お茶碗およそ1杯分(約113グラム)の食料を捨てている計算となる。
2022年度の食品ロス削減月間啓発のポスター。日本の食品ロス量(年間522万トン)を国民一人当たりで換算すると、毎日お茶碗およそ1杯分(約113グラム)の食料を捨てている計算となる。

日本は食品ロスを削減するために、政府、地方公共団体、事業者、消費者が協力して、様々な取組を実施している。

消費者庁は消費者向けのウェブサイト「めざせ!食品ロス・ゼロ」を開設し、啓発に努めている。

食品ロスとは、食べ残し、売れ残りなどの様々な理由で、食べられるにも関わらず、捨てられてしまう食品である。環境省・農林水産省の2020年度の推計によれば、日本の食品ロス量は年間522万トンに達する。そのうち、53パーセント(275万トン)が外食産業や食品製造業などの事業者から、47パーセント(247万トン)が家庭から発生している。

世界の食品ロスについては、国連食糧農業機関(FAO)の報告によれば、世界全体で人の消費のために1年間に生産される食料(約40億トン)の約3分の1に当たる13億トンが捨てられていることを示唆している。

このように食料が大量に捨てられることは社会に様々な影響を及ぼす。例えば、ごみ処理のコストの増加である。また、ごみを燃やすことによる二酸化炭素排出量の増加、焼却後の灰を埋める土地の増加といった環境の悪化にもつながる。こうしたことから、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)においても「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」というターゲットが掲げられている。

日本の取組

日本政府は、食品ロス量を2000年度の980万トンと比べて、2030年度に半減する目標を掲げている。その目標達成に向け、日本では様々な取組が実施されている。その重要な柱が、2019年10月に施行された「食品ロスの削減の推進に関する法律」である。同法は政府、地方公共団体、事業者、消費者など多様な主体が連携し、食品ロスの削減を推進するために制定された。同法には、食品ロスの削減に関する理解と関心を深めるために食品ロス削減月間を10月に定めること、政府が食品ロス削減推進に関する基本方針を策定すること、政府や地方公共団体が事業者や消費者に対する教育の振興、知識の普及などの取組を行うことなどが盛り込まれている。

同法を踏まえ、政府が力を入れる取組の一つは、情報発信である。消費者庁は消費者向けのウェブサイト「めざせ!食品ロス・ゼロ」を開設し、食品ロスに関する基本情報の他、家庭で食品ロスを減らすためのコツや工夫など様々な情報を提供している。また、農林水産省は、食品ロス削減、生活困窮者支援の観点から、政府の災害用備蓄食品をフードバンク団体などに提供するためのポータルサイトを開設した。日本では台風や地震などの災害が多いため、各省庁がアルファ米、飲料水、缶詰などを備蓄している。そうした各省庁の備蓄食品で賞味期限*が近づいたものの情報を集約し、ポータルサイトに掲載することで、フードバンク団体などが備蓄食品をより入手しやすくしている。

また、食品ロスの削減に向けた全国的な機運の醸成を図るため、2017年からは毎年、政府と地方公共団体が共催して、食品ロス削減全国大会を10月30日の食品ロス削減の日に開催(2020年のみ12月開催)し、講演やトークセッションを行っている。そのほかに、2020年からは、消費者庁・環境省は食品ロス削減の優れた取組を行っている事業者、学校、個人などを大臣等が表彰する食品ロス削減推進表彰を実施している。2021年度の受賞者の取組としては、例えば、食品商社の株式会社日本アクセスは、食品の受発注の改善や、食品のフードバンク団体への提供、AIを活用した食品の需要予測システムの導入などに取り組んでいる。こうした取組により、同社は1年間あたり300トン近くの食品ロスを削減している。食品リサイクルに取り組む一般社団法人食品ロス・リボーンセンターは、地方公共団体や事業者が保有する賞味期限の近い災害用備蓄食品を引き取り、子ども食堂やフードバンク団体などに寄贈している。また、賞味期限切れや保管状況の悪い災害用備蓄食品を飼料に加工する取組を行っている。神奈川県の鎌倉市立小坂小学校4年4組は、給食の残量を減らすために、食品ロス削減を促すポスターの作成、校内での呼びかけなどに取り組んだ。その結果、学校全体の給食の食べ残しが、1日平均15キロから200グラムへと、大幅な削減を達成した。

日本アクセスはフードバンク団体に食品を寄贈している。

近年、食品ロス削減に対する人々の意識は高まっている。消費者庁の調査によれば、食品ロス問題を認知して、食品ロス削減のために何らかの行動している人の割合は、2014年度は67.4パーセントであったが、2021年度には78.3パーセントとなっている。政府はこの数字を2025年度までに80パーセント以上にすることを目指している。一人ひとりの行動こそが、食品ロスのさらなる削減へとつながっていく。

注記: 本記事は消費者庁の了解の上、同庁の公表資料に基づき作成している。

食品ロス量の推移と削減目標
食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民の割合

* 消費者庁によると、賞味期限は「食べられなくなる期限ではなく、おいしく食べることができる期限であり、定められた方法により保存した場合に、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限」のこと。