音声広報CD「明日への声」トラックナンバー5(HTML版)|令和4年(2022年)11月発行分
音声広報CD「明日への声」 vol.88(令和4年(2022年)11月発行)
トラックナンバー5
(タイトル:畠山)
寒い時期のお風呂は要注意!入浴中の事故が多くなります。
(イントロダクション:畠山)
寒い季節になってくると、あったかいお風呂が嬉しいですよね。ついつい長湯をしてしまうかもしれませんが、実は入浴中の事故も発生しやすくなる季節です。入浴中に意識を失い、浴槽で溺れて亡くなる事故が多く発生しています。なぜ溺れてしまうのか、どうすれば事故を防げるのか、原因と対策をご紹介します。
(本文:Q.畠山/A.南雲)
Q:これからの時期はあったかいお風呂が楽しみでもありますが、お風呂で溺れてしまう事故が起きやすくなるんですか?
A:はい。気温が低くなる11月から4月にかけてはお風呂での事故が多く発生しています。冬場に浴槽で溺れて死亡してしまう方は、他の時期の何倍にも増え、1月は8月や9月のおよそ10倍にもなります。特に注意していただきたいのが高齢の方です。令和2年の場合、年間で約4700人の方が亡くなっており、これは交通事故で亡くなった約2200人の倍以上の数字です。冬場こそ入浴には気を付けてください。
Q:高齢の方には交通事故以上に身近な危険というわけですね。普通にお風呂に入っていて、なぜ溺れるようなことになってしまうのでしょうか?
A:湯舟でのぼせて、ぼうっとした経験はありませんか?熱めのお湯や長風呂は体温が上昇しすぎてしまい、高体温による意識障害で浴槽から出られなくなったり、浴槽内にしゃがみこんでしまったりして溺れてしまうおそれがあります。
また、冬場の寒い時期には寒暖差による血圧の急激な変化にも注意が必要になります。暖房がきいた暖かい部屋から、冷え切った浴室に裸で入ると、急激な寒暖差で血管が縮まって血圧が一気に上昇します。その後、浴槽に入り体が温まってくると今度は血管が広がり、急上昇した血圧が下がります。この急激な血圧の変化で、脳へ血液がまわらない貧血の状態になり、一次的な意識障害を起こすことがあります。これが浴槽内で起こってしまうと、そのまま溺れて死亡する事故につながると考えられているんです。特に65歳以上の高齢者は、血圧を正常に保つ機能も衰えてきている場合がありますので注意してください。また、血圧が不安定な方、風呂場でめまいや立ちくらみを起こしたことのある方も注意が必要です。
Q:高体温や貧血で意識を失ってしまい溺れるんですね。どうしたら事故が防げるでしょうか?
A:六つポイントがありますので、ご紹介します。
一つ目は、「入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく」です。
急激な血圧の変化を防ぐため、お風呂を沸かすときに暖房器具などを使って脱衣所や浴室内を暖めておきましょう。浴室に暖房設備がない場合は、「湯を張るときにシャワーから給湯する」「湯が沸いたところで、十分にかき混ぜて蒸気を立て、ふたを外しておく」など、できるだけ浴室内を暖め、寒暖差が少なくなるように工夫しておきましょう。
Q:浴室暖房などの設備がなくても、工夫次第で寒暖差を減らせそうですね。二つ目のポイントはなんでしょう?
A:二つ目は 「湯温は41度以下、お湯につかる時間は10分までを目安にする」です。
熱いお湯や長湯が好きな人は注意してください。例えば、42度のお湯で10分入浴すると、体温が38度近くに達し、高体温などによる意識障害を起こす危険が高まります。また、かけ湯をしてからお湯に入るようにしましょう。足元のほうから肩まで徐々にお湯をかけてお湯の温度に体を慣らすと、心臓に負担がかからず血圧の急激な変動を防げます。
Q:湯温は41度以下、入浴は10分までですね。次はなんでしょうか?
A:三つ目は「浴槽から急に立ち上がらない」です。
入浴中は体に水圧がかかっていますから、急に立ち上がると圧迫されていた血管が一気に拡張して、脳に行く血液が減ることで貧血のような状態になり、意識を失ってしまうことがあります。浴槽から立ち上がったときに、めまいや立ちくらみを経験したことがある方は要注意です。浴槽から出るときは、手すりや浴槽のヘリなどを使って、ゆっくり立ち上がるようにしましょう。
Q:私も立ちくらみの経験あります。ゆっくり立ち上がると良いんですね。次は四つ目ですね。
A:四つ目のポイントは「食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避ける」です。
特に高齢者は、食後に血圧が下がり過ぎる「食後低血圧」によって失神することがあるため、食後すぐの入浴は避けましょう。飲酒によっても一時的に血圧が下がります。飲酒後はアルコールが抜けるまで入浴はしないようにしましょう。また、体調の悪いときや、精神安定剤、睡眠薬などの服用後も入浴は避けてください。
Q:食後、少し時間をおいてからお風呂に入るようにしたほうが良いんですね。
五つ目のポイントは?
A:はい。五つ目は「お風呂に入る前に、同居する家族に一声かける」です。
これはとても大事なことで、入浴中に体調の悪化などの異変があった場合、いかに早く発見してもらうかが重要になります。そのためにも入浴前に家族に一声かけてから入浴するように習慣づけておきましょう。また、家族の方は、高齢者が入浴していることを気にかけておき、「時間が長い」「音が全くしない」「突然大きな音がした」など何か異常を感じたら、ためらわずに声をかけるようにしましょう。
Q:これは家族みんなで意識してほしいですね。最後の六つ目は何でしょうか?
A:六つ目は「湯温や部屋の温度差、入浴時間などを確認できるようにする」ことです。
居間や脱衣所が18度未満の住宅では、入浴事故のリスクが高いとされる湯温42度以上の「熱めの入浴」、15分以上の「長めの入浴」をする人が多くなる、という研究結果もあります。温度計やタイマーなどを活用して、湯温、部屋の温度、入浴時間など普段意識しにくい部分について確認できるようにしましょう。
Q:6つのポイントを意識して、安全にお風呂を楽しみたいですね。最後に、もしお風呂で意識を失っている人を見つけたらどう対応したらいいでしょうか?
A:事故を発見したら、これから述べることを可能な範囲で対応してください。
- 浴槽の栓を抜いて大声で助けを呼び、人を集めてください。また、直ちに救急車を要請しましょう。
- 入浴者を可能であれば浴槽から出し、出せない場合は蓋に上半身を乗せるなど沈まないようにしましょう。
- 浴槽から出せた場合は、肩をたたきながら声をかけ、反応があるか確認しましょう。反応がなければ呼吸を確認し、呼吸が無い場合は胸骨圧迫を開始しましょう。
- 人口呼吸ができるようでしたら、胸骨圧迫を30回、人工呼吸を2回繰り返しましょう。できなければ胸骨圧迫のみ続けてください。
Q:いざというときのために、救命講習を受けるなど、応急手当も覚えておきたいですね。
(エンディング:畠山)
入浴中の事故は、持病や前兆が無い場合でも起こるおそれがあります。「自分は元気だから大丈夫」と過信せず、「自分にも、もしかしたら起きるかもしれない」と意識することが大切です。また、本人だけでなく家族や周囲の方が一緒に注意することが大切です。
消費者庁のホームページでは、入浴事故の注意喚起を行っています。より詳しく知りたい方は、ぜひ「消費者庁 入浴」で検索してみてください。