何が危ない?どう防ぐ? ジカウイルス感染症(ジカ熱)予防のポイント

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平成27年(2015年)5月以降、中南米を中心に、「ジカウイルス感染症(ジカ熱)」が広がっています。主に蚊によって媒介され、感染しても症状が現れる人はおよそ2割にとどまり、ほとんどの場合は軽症で済みます。しかし、ジカウイルスに感染すると、稀にギラン・バレー症候群となったり、妊婦が感染すると生まれてくるこどもが小頭症などの障害を持ったりする可能性があることが分かっています。ジカウイルス感染症が流行している中南米地域や米国の一部、東南アジアなどから、人の往来により日本にもジカウイルスが持ち込まれ、感染が広がるおそれがあります。ジカウイルス感染症を防ぐためのポイントを紹介します。

1ジカウイルス感染症とはどんな病気?症状が出るのは感染者の約2割。デング熱と比較すると症状は軽いが、妊娠中に感染すると赤ちゃんに影響がでることも。

ジカウイルス感染症は、ジカウイルスに感染することによって発症する病気です。ヤブカ属のヒトスジシマカやネッタイシマカなどによってウイルスが媒介されて感染します。日本にはネッタイシマカは生息していませんが、ヒトスジシマカは本州以南では生息が確認されています。このほか、性行為を通じて感染した事例も報告されています。

ジカウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は2日から12日ほど。感染者のうちおよそ8割の人には、ほとんど症状が現れません。残り2割の人に軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉や関節の痛み、だるさ、頭痛等が出ることがあります。ジカウイルス感染症には、現在のところ有効な治療薬はありませんが、通常は比較的症状が軽く、特別な治療を必要としません。ほとんどの場合、発症して2日から7日程度で回復します。

このように、ジカウイルス感染症の症状自体はデング熱と比較して軽度のことが多いのですが、ジカウイルス感染症が流行している地域で「小頭症」や「ギラン・バレー症候群」などの患者が増加しており、ジカウイルス感染症との関連が明らかにされています(コラム1参照)。

コラム1

小頭症とギラン・バレー症候群について ジカウイルス感染症が引き起こすことも

小頭症等の胎児異常

小頭症は、赤ちゃんが極端に小さい頭で生まれるか、出生後に頭の成長が止まる稀な疾患です。小頭症の赤ちゃんは、成長につれててんかん、脳性まひ、学習障害、難聴、視覚障害などを起こす可能性があり、小頭症に対する特別な治療法はみつかっていません。小頭症の原因は不明のことが多いですが、母親が妊娠中に何らかの感染症にかかったり、有毒な化学物質を摂取してしまったりすることなどが関連すると考えられています。
これまでの研究から、WHO(世界保健機関)や米国CDC(疾病予防管理センター)は、ジカウイルスが小頭症の原因になることがあると結論づけています。

参考)
厚生労働省検疫所(FORTH)「小頭症」
国立感染症研究所「ジカウイルス感染症のリスクアセスメント第11版」(2017年3月31日)
CDC「CDC Concludes Zika Causes Microcephaly and Other Birth Defects」

ギラン・バレー症候群

ギラン・バレー症候群は、手や足の力が入らなくなり、しびれ感が出た後、症状が全身に広がる病気です。比較的急速に進行することが特色で、発症後1日から2週間で筋力低下が全身に及びます。重症の場合は、声が出にくい、食べ物が飲み込みにくい、呼吸が苦しいといった症状を起こし、時には人工呼吸器が必要になることもあります。症状が軽い場合は自然に回復することもありますが、多くの場合は入院治療が必要になります。
原因は不明ですが、一般に感染症や医薬品の副作用の影響が疑われています。ジカウイルス感染症の流行地域でのギラン・バレー症候群の患者が増えており、WHOはジカウイルス感染によりギラン・バレー症候群が発症することがあるとしています。

参考)
厚生労働省検疫所(FORTH)「ギラン・バレー症候群について(ジカウイルス感染症の関連を含む)(ファクトシート更新3)」
国立感染症研究所「ジカウイルス感染症のリスクアセスメント第11版」(2017年3月31日)

ジカウイルス感染症は、日本では、平成25年(2013年)以降、海外の流行地域で感染し、発症した症例(輸入症例)が報告されていますが、日本国内で感染した症例はありません。
しかし、ジカウイルス感染症の流行地域と日本の間では、多数の人が仕事や観光などで往来しています。

このため、日本でも検疫体制の整備、全国81か所の地方衛生研究所での検査体制の整備、医療機関向けの診療ガイドラインの作成などの対策を行いました。それらと合わせて、一人ひとりがジカウイルスに感染しない、感染を広げないことも大切です。私たちができる対策を紹介します。

2どのようにして感染するの?ジカウイルスを持った蚊に刺されることで感染。性行為による感染も。

ジカウイルス感染症は、ジカウイルスを持った人から血を吸いジカウイルスを持つようになった蚊に刺されることによって感染します。その感染者が、別の蚊に刺されると、今度はその蚊にジカウイルスが移ります。このように、蚊を媒介して感染が広がる点では、平成26年(2014年)夏に日本国内でも発生したデング熱と同じです。また、媒介する蚊もデング熱と同じ、ヒトスジシマカやネッタイシマカなどのヤブカ属の蚊です。ただし、ジカウイルスについては、性行為による感染事例も報告されています。

○蚊による感染

○性行為による感染

コラム2

媒介蚊はデング熱と同じ「ヒトスジシマカ」や「ネッタイシマカ」などのヤブカ属の蚊

ジカウイルスを媒介する蚊は、デング熱と同様、ヒトスジシマカやネッタイシマカなどのヤブカ属の蚊です。ヒトスジシマカは、日本では本州以南に広く生息し、体長4.5ミリ程度、背中に1本の白い線があり、活動時期は地域によって異なりますが、5月中旬から10月下旬ごろまでです。

ヒトスジシマカの行動範囲は生息環境で異なりますが、飛行範囲は50メートルから100メートル程度といわれています。ヤブなど蚊の移動に適した場所ではそれよりも大きな範囲での移動も考えられます。しかし、蚊だけではなく、感染した人が移動することで、遠く離れた別の地域にウイルスを持ち込む可能性があります。移動先でヒトスジシマカに刺されたときに、その人が血中にウイルスを保有していたら、蚊がウイルスを持つ可能性もあり、その蚊の体内でウイルスが増殖した後にさらに他の人にウイルスを移すことも考えられます。

イラスト:ヒトスジシマカ

もう1種の媒介蚊であるネッタイシマカは、1970年代以降、日本国内から消滅したとされています。ただし、ネッタイシマカは熱帯・亜熱帯に広く生息しているので、そうした地域に渡航する人は、ネッタイシマカの媒介によりジカウイルスに感染する可能性があります。

3ジカウイルスの感染を防ぐには?「蚊に刺されない対策」と「蚊の発生を抑える対策」を。

現在、ジカウイルス感染症を予防するワクチンや治療薬はなく、治療法は対症療法が主となります。そのため、ジカウイルスの感染を防ぐためには、媒介する蚊に刺されないこと、また、蚊の発生を抑えることが重要な対策となります。

【対策1】蚊に刺されない

自分が感染しないために、そしてほかの人に感染を広げないために、蚊に刺されないようにすることが大事です。特に妊娠中の女性は、蚊に刺されないように注意してください。
日本でも見られるヒトスジシマカは日中(特に、日の出前後の明け方と、夕暮れ時から日没後1時間から2時間の間が特に活発)にヤブや木陰などで活動しますが、場合によっては家の中に入ってきたり、夜間に血を吸ったりすることもあります。一方、海外で見られるネッタイシマカは昼間も活発に活動し、家の中に入ってきて血を吸うことが多いとされています。蚊が発生している地域や場所では、できるだけ次のような対策をしましょう。

蚊のいるような場所に行くときは

素足でのサンダル履きを避ける
白など薄い色のシャツやズボンを選ぶ(蚊は色の濃いものに近づく傾向がある)
肌を露出しない長袖、長ズボンを着用する など

蚊を近づけないためには

虫除けスプレーなどを使用する(定期的に塗りなおすなど、適切に使用する)
蚊取り線香などを使用する   など

【対策2】蚊の発生を抑える

ジカウイルスを媒介する蚊の発生を抑えることが大事です。日本にも生息するヒトスジシマカは主にヤブや墓地、公園などに生息し、日中に活発に活動します。水中に産卵しますが、沼や池のような広い場所よりも、狭い水たまりのような場所を好みます。例えば、屋外に置かれた植木鉢の受け皿や空き缶、ペットボトルなどに溜まった水、野積みされた古タイヤに溜まった水などにも好んで産卵し、孵化(ふか)した幼虫はそこで成長します。
こうした生態から、家の周囲を点検して不要な水たまりをなくすことが、ヒトスジシマカの発生を抑え、ジカウイルスの感染拡大を防ぐことにつながります。

家の周囲に不要な水たまりがないかをチェック

 

4流行地域へ行く人への注意点流行の最新情報を確認し、現地では蚊に刺されない対策を。妊娠中の人や妊娠の可能性のある人は流行地域への渡航は控えましょう。

ジカウイルス感染症は、平成29年(2017年)5月現在、中南米・カリブ海地域、オセアニア太平洋諸国、アフリカ、東南アジア等で発生しています。特にブラジルなど中南米およびその周辺で大規模な流行が見られていますので、流行地域に渡航するかたは注意が必要です。

主な流行国・地域(*平成29年(2017年)5月26日現在)

【中南米】

アンギラ、アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、アルバ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ボリビア、ボネール、ブラジル、英領バージン諸島、ケイマン諸島、コロンビア、プエルトリコ、コスタリカ、キューバ、キュラソー島、ドミニカ国、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、仏領ギアナ、グレナダ、グアドループ、グアテマラ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ジャマイカ、マルティニーク、メキシコ、モントセラト、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、サバ島、セントルシア、セント・マーティン島(仏領サン・マルタン及び蘭領シント・マールテン)、セントビンセント及びグレナディーン諸島、シント・ユースタティウス島、セントクリストファー・ネーヴィス、スリナム、トリニダード・トバゴ、タークス・カイコス諸島、米領バージン諸島、ベネズエラ

【大洋州】

フィジー、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ

【アフリカ】

アンゴラ、ブルキナファソ、ブルンジ、カーボベルデ、カメルーン、中央アフリカ、コートジボワール、ガボン、ギニアビサウ、ナイジェリア、セネガル、ウガンダ

【アジア】

バングラデシュ、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、モルディブ、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム

【北米】

米国

最新の流行地域については下記をご覧ください。

海外渡航を予定している方は、次のことにご注意を!

【妊娠中の人や妊娠の可能性がある人は】

  • 流行地域への渡航・滞在を可能なかぎり控えましょう。世界保健機関(WHO)は、2016年(平成28年)3月8日、妊婦は流行地域への渡航をすべきでないと勧告しています。
  • やむを得ず渡航する場合は、主治医と相談の上で、厳密な防蚊対策を講じてください。

【渡航先では】

  • ジカウイルス感染症の流行地域に渡航する人は、虫除けスプレーなどを使ったり、肌の露出を控えたりするなどの対策をして、蚊に刺されないようにしてください。

 

【帰国後は】

  • 帰国時に軽度の発熱や発疹など、ジカウイルス感染症を疑う症状がみられた場合には、空港や港の検疫官に相談してください。
  • 流行地域から帰国した人は、症状の有無にかかわらず、最低2週間程度(※)は特に蚊に刺されないように注意してください。
  • 流行地域から帰国した男女は、ジカウイルス感染症の症状の有無にかかわらず、少なくとも6か月(※)、パートナーが妊娠中の場合は、妊娠期間中、性行為の際はコンドームを使用するか、性行為を控えてください。

※なお、これらの期間は今後の新たな知見により、変わる場合があります。

なお、帰国時に、空港や港では、ジカウイルス感染症などの感染症の患者を発見するため、検疫所においてサーモグラフィーを日常的に使用し発熱者などを発見し、診察、健康相談などを実施し必要に応じて検査を実施しています。

コラム3

海外に行く人へ 最新の感染症の発生状況を確認しましょう。

海外では、ジカウイルス感染症のほかにも、デング熱やマラリア、チクングニア熱、黄熱など、蚊が媒介する様々な感染症があります。
海外で蚊に刺されることによって感染し、日本で発症する例が毎年報告されています。マラリアを媒介する「ハマダラカ」や、デングウイルスやチクングニアウイルスを媒介する「ヒトスジシマカ」は日本にもいます。2014年(平成26年)のデング熱患者の発生と同じように、国内感染が広がるおそれがありますので、海外でも国内でも、蚊に刺されないよう、しっかりと対策をしておくことが重要です。
また、海外では、日本にはない感染症があり、蚊による感染症だけでなく、マダニや動物、水や食べ物などを介する感染症も多く発生しています。渡航先の感染症の発生状況に関する最新の情報や注意事項を確認しましょう。

詳しくはこちらをご覧ください。

5ジカウイルス感染症を疑う症状があるときは?ただちに医療機関への受診や保健所、検疫所などに相談を。

ジカウイルス感染症の症状は、デング熱よりも軽症です。また、8割の人は症状が出ないため、感染しても気付きにくいことがあります。現われる症状も様々ですが、主な症状として、軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛などが報告されています。

流行地域から帰国したかたは

  • 渡航中に軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛や関節痛などの症状が現れたときは、すぐに医療機関を受診してください。
  • 帰国時に発疹など心配な症状のあるかたは、空港や港の検疫所にご相談ください。
  • 帰国後に発症した場合や、症状が改善しない場合は、お近くの医療機関を受診したり、保健所にご相談ください。医療機関を受診するときは、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

また、流行地域に渡航したかたとの性行為があった場合は、相手の渡航先や渡航期間なども伝えましょう。

(取材協力:内閣官房、厚生労働省 文責:政府広報オンライン)

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