契約トラブルから身を守るために、知っておきたい「消費者契約法」

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不当な勧誘により契約をしてしまった父親に、消費者契約法を教えている息子

Point
消費者と事業者との間には、それぞれが持つ情報の質・量や交渉力に格差があります。これを踏まえ、消費者を守るためにできた法律が「消費者契約法」です。

「契約前の説明と違う」「強引に契約させられた」など、契約後に「失敗した!」と気付いて後悔したことはありませんか? そんなときに頼りになるのが「消費者契約法」。不当な勧誘や契約から消費者を守ってくれる法律です。
この記事では、契約トラブルから身を守れるよう、消費者契約法を分かりやすく説明し、相談窓口もご紹介します。

1「消費者契約法」とはどんな法律?

「契約」というと特別なものだと感じるかもしれませんが、私たちは日々の生活の中で、様々な契約を行っています。お店やネットショップで商品を買ったり、有料サービスを受けたりする場合などのように消費者が事業者と交わす契約を「消費者契約」と言います。
消費者契約においては、事業者は消費者に比べて取引についての知識や経験が豊富であり、交渉力でも格差があります。このため、消費者は気付かぬうちに、あるいは断りきれずに不利な契約を結んでしまうおそれがあります。意に添わない契約や誤認に基づく契約などを行い、後悔するといった契約トラブルから消費者を守るために定められたのが「消費者契約法」で、大きく次の3点を定めています。

消費者契約法が定める3つの事項

  • (1)不当な勧誘により締結してしまった契約は、後から「取消し」できます。
  • (2)消費者の利益を不当に害する契約条項は、「無効」となります。
  • (3)事業者に対する「努力義務」を定めています。

なお、消費者契約法における「消費者」とは個人を指し、事業としての契約や事業のために契約の当事者となる場合は除きます。また、労働契約については、この法律の適用範囲に含まれません。

2契約を「取消し」できるのはどんなケース?

消費者契約法では、消費者の「取消権」を認めており、事業者からの不当な勧誘によって、消費者が誤認したり困惑したりして締結した契約については、後から「取消し」できるものとしています。契約を「取消し」できるケースとしては、次のような行為が当てはまります。

事業者の行為によって消費者が誤認した状態で契約

(ケース1)重要事項について事実と異なる説明があった場合(不実告知)

(例)事業者が「タイヤの溝が大きくすり減っていて危険」などと言って消費者の不安をあおり、実際は危険なほどすり減ってはいないのに、新しいタイヤを販売した。

(ケース2)不確実な事項について「確実」と説明された場合(断定的判断の提供)

(例)将来、確実に値上がりするとは限らない金融商品を、事業者が「確実に値上がりする」「必ず儲かる」などと説明して消費者に販売した。

(ケース3)消費者に不利な情報を告げなかった場合(不利益事実の不告知)

(例)事業者が、隣の土地に眺めや陽当たりを阻害するマンションの建設計画があることを知りながら、それを消費者に説明せずに住宅を販売した。

事業者の行為で消費者が困惑した状態で契約

(ケース4)事業者が消費者の自宅や勤務先などに強引に居座った場合(不退去)

(例)消費者の自宅を訪れて勧誘する事業者に、「もうお引き取りください」と言っても「契約してくれるまで帰らない」などと居座り、強引に契約させた。

(ケース5)販売店などで消費者が強引に引き留められた場合(退去妨害)

(例)事業者の販売店や事務所などで勧誘された消費者が、「契約しませんのでもう帰ります」と言っても、「まだ説明が終わっていない」などと強く引き留め、契約させた。

(ケース6)勧誘することを告げずに退去困難な場所へ同行し勧誘した場合

(例)事業者が「景色を見に行こう」などと言って、消費者を交通の便の悪い山奥に連れ出し、自力では帰宅困難な状況で勧誘し、契約させた。

(ケース7)威迫する言動を交え相談の連絡を妨害した場合

(例)消費者が「契約するかどうか親に相談したい」と事業者に言ったものの、「もう成人だから自分で決めないとだめだ」などと威迫する言動を交えて勧誘し、契約させた。

契約書を前に「親に電話相談してもいいですか?」と事業者に言ったものの、「大人なんだから自分で決めないとダメだよ」などと威迫する言動を交えて勧誘を受けている消費者

(ケース8)就職セミナー商法など(不安をあおる告知)

(例)事業者が就職活動中の消費者に対し、「このままでは一生成功しない、この就職セミナーが必要」と不安をあおるような勧誘により契約させた。

(ケース9)デート商法など(好意の感情の不当な利用)

(例)異性の勧誘者に好意を抱いた消費者に対し、「この商品を買ってくれないと関係を続けられない」などと告げて契約させた。

(ケース10)高齢者などが不安をあおられる(判断力の低下の不当な利用)

(例)加齢や心身の故障により判断力が低下した消費者に対し、「投資用マンションを買わなければ今のような生活を送ることは困難」などと不安をあおるような勧誘により契約させた。

(ケース11)霊感などによる知見を用いた告知

(例)事業者が消費者に対し、「あなたの病気は悪霊のせい。この数珠じゅずを買わないと悪霊を除去できない」などと不安をあおるような勧誘により契約させた。

事業者から「この数珠を買えば悪霊が去り、病状が良くなります」などと病状悪化を心配させ、不安をあおるような勧誘を受けている消費者

(ケース12)契約前なのに強引に損失補償を請求されるなど(契約締結前に債務の内容を実施など)

(例)他県から勧誘に来た事業者に対し、消費者が断ろうとしたところ「あなたのためにここまで来た、断るなら交通費を支払え」と請求された。

過量な内容の契約

(ケース13)分量や回数などが多過ぎる場合(過量契約)

(例)あまり外出せず、着物を着る機会の少ない高齢の消費者に対し、事業者がそのことを知りながら、何十着もの着物を勧誘し、契約させた。

取消権を行使できる期間は?

消費者契約法では、「取消し」ができる期間を以下のように定めています。

  • 契約の締結から5年間
    ただし、(ケース11)霊感などによる知見を用いた告知の場合は10年間
  • 消費者が誤認に気付いたり、勧誘による困惑を脱したりするなど、取消しの原因となっていた状況が消滅したとき(=追認できるとき)から1年間
    ただし、(ケース11)霊感などによる知見を用いた告知の場合は3年間

個別事案における対応については、相談窓口にお尋ねください。

3「無効」となる不当な契約条項とは?

消費者の利益を不当に害する契約内容については、契約書に記載されていても効力を持ちません。「無効」となる不当な契約条項としては、次のようなものが当てはまります。

(ケース1)事業者に責任があっても「損害賠償責任はない」とする条項

(例)「当ジムは、会員の施設利用に際して生じた傷害や盗難など、いかなる事故についても一切責任を負いません」など、損害賠償責任を全て免除する条項。

(ケース2)免責の範囲が不明確な条項

(例)「当社は“法律上許される限り”1万円を限度として損害賠償責任を負う」など、免責の範囲が不明確な条項。
※事業者に故意・重過失がある場合には全額を賠償されるはずが、「法律上許される限り」の記載により、消費者は本来の賠償が受けられないと誤認してしまう可能性があります。ケース2のような条項は、軽過失の場合にのみ適用されることを明らかにしていないと無効となります。

(ケース3)「一切のキャンセルや返品・交換などを認めない」とする条項

(例)「販売した商品については、いかなる理由があってもキャンセル・返品、返金、交換は一切できません」などとする条項。

事業者から「受け取った商品に不具合があった場合も、キャンセルは一切できないことになっております。」と言われ、「確かに書いてあるけども…」と納得がいかない様子の消費者

(ケース4)成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項

(例)アパートなどの賃貸借契約において「賃借人(消費者)が成年後見開始の審判を受けた時は、賃貸人(事業者)は直ちに本契約を解除できる」などとする条項。

(ケース5)消費者が負うキャンセル料や遅延損害金が高過ぎる条項

結婚式場の契約をキャンセルしたら、事業者から高額なキャンセル料を請求され、「どうしてそんなにかかるの!」と驚く消費者

(例) 結婚式場などの契約において、「契約後にキャンセルする場合の解約料は、予定日の一年以上前でも契約金額の80%」とする条項。
※解除に伴う平均的損害を超える部分については無効となります。

(例)「家賃の支払期限を過ぎた場合、1か月の家賃に対し年30%の遅延損害金を支払う」など、遅延損害金が年利14.6%を超える条項。
※遅延損害金につき年利14.6%を超える部分については無効となります。

(ケース6)消費者が一方的に不利になる条項

(例)民法では、事業者に対し「商品の種類・品質が契約内容に適合していない場合、その事実を知ったときから1年以内に通知すること」が定められているにもかかわらず、正当な理由なく、この期間を不当に短くするような条項。
※任意規定の適用による場合に比べ、消費者の権利を制限し、又は義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効となります。

4事業者に求められる「努力義務」

消費者契約法では、契約トラブルから消費者を保護するため、事業者に対し、次のような情報提供や説明に努める必要があると定めています。

  • 契約条項を定めるに当たって、その解釈について疑義が生じない明確で平易なものになるよう配慮すること。
  • 勧誘に際し、契約内容について必要な情報を提供すること。
  • 消費者が定型約款(定型的な契約条項)の表示の請求をするために必要な情報を提供すること。
  • 消費者の求めに応じて契約を解除するために必要な情報を提供すること。
  • 消費者に解約料を請求する際に、消費者に求めに応じて算定根拠の概要を説明すること。
    加えて、適格消費者団体※からの要請対応に努める必要があることも定めています。

※消費者全体の利益擁護のために差止請求権を適切に行使することができる適格性を備えた消費者団体として、内閣総理大臣の認定を受けた法人(全国に23団体)

なお、一方で消費者に対しても、消費者契約を締結する際には、事業者から提供された情報を活用して、契約の内容を理解するよう求めています。

コラム

消費者契約法は最近の法改正でどう変わったか?

消費者契約法は、平成12年(2000年)5月に制定され、翌年4月に施行されました。その後、数回にわたって「取消しできる契約の範囲の拡大」や「無効となる不当な契約条項の追加」などの改正が行われています。
直近では、令和4年(2022年)に2回の改正が行われ、令和5年(2023年)1月及び6月に施行されました。これら直近の法改正の主なポイントとして、次の3つがあります。

(1)消費者の「取消権」に新たな項目を追加

前述の「(ケース6)退去困難な場所へ同行されての勧誘」「(ケース7)威迫による相談妨害」が追加されるとともに、「(ケース11)霊感などによる知見を用いた告知」「(ケース12)契約前なのに強引に損失補償を請求されるなど」の対象範囲が拡大されました。

(2)「無効」となる条項を追加

前述の「(ケース2)免責の範囲が不明確な条項」が追加されました。

(3)事業者の「努力義務」を追加

定型約款の表示請求権に関する情報提供や、解除権行使に必要な情報提供、解約料に関する算定根拠の概要の説明などが、努力義務として追加されました。

サブスク契約を解除したいけれど、サイトが複雑なため、どうすれば解約できるか分からず困っている消費者
改正に伴い、この図のように消費者が契約を解除する方法が分からず困っているようなケースにおいて、事業者は消費者から求められたら契約の解除のために必要な情報を提供するよう努めなければなりません

まとめ

消費者契約法は消費者を守るための法律です。どのようなときに契約の取消しができるのか、どのような契約条項が無効になるのかを理解しておくことが大切です。 また、契約トラブルで困った場合や、契約に関する不安などがある場合は、公的な相談窓口にご相談ください。

5契約で困ったときや不安なときの相談窓口は?

消費者ホットライン 188(いやや)

全国どこからでも、3桁の電話番号「188」でご連絡ください。お近くの地方自治体の消費生活相談窓口をご案内します。
電話番号

全国の消費生活相談窓口

一覧は下記のページをご覧ください。

また、消費者トラブルの未然防止・拡大防止及び被害回復を図る消費者団体訴訟制度があります。詳細は以下の記事をご参照ください。

(取材協力:消費者庁 文責:政府広報オンライン)

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