急性アルコール中毒の怖さを知っていますか?イッキ飲みや無理強いは命にかかわることも!
「場の空気を壊したくないから」「強く勧められたから」――そんな理由で、短時間に多量のお酒を飲む、いわゆる「イッキ飲み」をしたり、他人にさせたりしたことはありませんか?それは、命にかかわる「急性アルコール中毒」になりかねない危険な行為です。正しい知識を身につけて、楽しく安全にお酒と付き合いましょう。
1急性アルコール中毒はなぜ危険なの?重症になると意識を失い、呼吸が止まるなどして命を失うことが。
急性アルコール中毒は、短時間に多量のお酒を飲むことにより血中アルコール濃度が急上昇して、脳に影響を与える状態をいいます。
お酒を飲むと人は「酔った」状態になりますが、それはお酒の成分であるアルコールが血液に溶けて脳に運ばれ、脳に作用することによって起こります。酔いの程度は、血中アルコール濃度によって段階的に変わります(下表)。
血中濃度 (%) |
酔いの状態 | 脳への影響 | |
---|---|---|---|
0.02~0.04 | 爽快期 | さわやかな気分になる 皮膚が赤くなる 陽気になる 判断力が少しにぶる |
網様体がまひして、理性をつかさどる大脳皮質の活動が低下し、抑えられていた大脳辺縁系(本能や感情をつかさどる)の活動が活発になる |
0.05~0.10 | ほろ酔い期 | ほろ酔い気分になる 手の動きが活発になる 抑制がとれる(理性が失われる) 体温が上がる 脈が速くなる |
|
0.11~0.15 | 酩酊初期 | 気が大きくなる 大声でがなりたてる 怒りっぽくなる 立てばふらつく |
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0.16~0.30 | 酩酊期 | 千鳥足になる 何度も同じことをしゃべる 呼吸が速くなる 吐き気・おう吐がおこる |
小脳までまひが広がり、運動失調(千鳥足)状態になる |
0.31~0.40 | 泥酔期 | まともに立てない 意識がはっきりしない 言語がめちゃくちゃになる |
海馬(記憶の中枢)までまひが広がり、今やっていること、起きていることを記録できない(ブラックアウト)状態になる |
0.41~0.50 | 昏睡期 | ゆり動かしても起きない 大小便はたれ流しになる 呼吸回数が少なくなる 死亡 |
まひが脳全体に広がり、呼吸中枢(延髄)も危ない状態となり、死にいたる |
(資料:アルコール健康医学協会の資料を基に作成)
ごく軽いうちは顔が赤くなったり陽気になったりする程度で「ほろ酔い」ともいわれますが、状態が進んで「酩酊」や「泥酔」を超えると、正常に歩けなくなったり意識がもうろうとしたりします。さらに進むと意識を失ったり失禁したりするようになり、なおも進むと脳の呼吸中枢が正常に働かなくなって死に至ります。
実際、急性アルコール中毒のために救急搬送されたり死亡したりする例が、毎年のように起きています。
「昨夜は飲み過ぎて記憶をなくした」「酔って眠り込んで電車を乗り過ごした」などと笑い話にされることがありますが、これはアルコールによって脳が影響を受けていたためで、一歩間違えればもっと深刻な事態になっていたかもしれません。
特に、「イッキ飲み」のように、短時間に多量のアルコールを摂取する飲み方は、血中アルコール濃度が急上昇しやすく、一気に「泥酔」や「昏睡」といった危険な状態になりがちです。絶対に避けましょう。
急性アルコール中毒とアルコール依存症は違うの?
急性アルコール中毒は、短時間に多量のお酒を飲むことにより血中アルコール濃度が急上昇して、脳に影響を与える状態をいいます。
アルコール依存症はかつて慢性アルコール中毒と呼ばれていました。現在でも俗に「アル中」と呼ばれることがあります。しかし、アルコール依存症はアルコールの飲み方を自分でコントロールできなくなってしまった状態であり、急性アルコール中毒とは異なる状態を指します。
2急性アルコール中毒を防ぐには?「ほろ酔い」を超えない量とペースで。無理強いやイッキ飲みは絶対NG!
大人には、食事や宴会などでお酒を飲む機会が少なくありません。では、どの程度から急性アルコール中毒の危険が高まるのでしょうか。
性別や個人差、健康状態や環境によっても異なりますが、一般的には「爽快期~ほろ酔い」になるくらいの量、血中アルコール濃度0.02~0.1%まで(純アルコール量なら20g程度まで)なら、急性アルコール中毒になる危険は低いといわれています。
「爽快期~ほろ酔い」に相当する酒量(純アルコール20g程度)
お酒の種類 | お酒の量 | アルコール度数 | 純アルコール量(約) |
---|---|---|---|
ビール | 500ml | 5% | 20g |
日本酒 | 180ml | 15% | 21.6g |
ウイスキー | ダブル1杯 60ml | 43% | 20.6g |
ワイン | グラス1杯 180ml | 14% | 20.2g |
チューハイ | 520ml | 5% | 20.8g |
焼酎 | グラス半分 110ml | 25% | 22g |
アルコール量の計算式=お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8
(資料:アルコール健康医学協会ウェブサイトの資料を基に作成)
なお、女性は男性より、高齢者は若者より、体格の小さい人は大きい人より、体内の水分量が少ないため、同じ量を飲んだときの血中アルコール濃度が高くなります。そうした方はこの表よりも少なめにするよう心がけましょう。
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お酒の無理強いは、絶対にNG!~飲めない人や飲みたくない人にお酒を強いるのは、「暴力」と同じです
「飲めない体質だから」などと渋る人に、「このくらいなら大丈夫だから」「酒に慣れれば強くなるから」などと無理強いして飲ませ、急性アルコール中毒を引き起こした事例があります。
お酒に強い体質かどうかは、体内に入ったアルコールを分解する肝臓の酵素の働きで決まります。お酒を少し飲んだだけで顔が赤くなる方は、アルコールを分解する酵素の働きが弱く、酔いやすい体質です。この体質は遺伝的なものなので、飲酒の経験を積んだからといって簡単に変わることはありません。人によっては、ほんのひと口のお酒でも重症化することがありますので、本人が慎むのはもちろん、周囲の人はお酒を勧めないようにしましょう。ましてお酒の無理強いは、絶対にしてはいけません。
急性アルコール中毒を防いで安全にお酒を楽しむためには、次のようなことを心がけましょう。
楽しく安全に飲むための「飲酒3か条」
(1)自分の適量、その日の体調を把握する
風邪薬や花粉症の薬などを飲んでいる場合は、アルコールを控えるか事前に医師に相談するようにしましょう。
(2)イッキ飲みはしない、無理強いはしない・させない
イッキ飲みなど、短時間に多量のお酒を飲むと、血中アルコール濃度が急激に高くなるため、急性アルコール中毒の危険性も高まります。飲酒を強要するのもダメです。
(3)お酒が飲めない体質の方は、周囲の人に「お酒が飲めない体質です」と事前に伝えておく
お酒が飲めない方は、その旨を事前に周囲の人に伝えておきましょう。もし無理強いしようとする人がいても、他の人がたしなめてくれることがあります。
また、次のようなことも心がけましょう。
飲むときは食べながら
食事をとりながらお酒を飲むことで、胃を守り、アルコールの吸収を緩やかにします。
強いお酒は水や炭酸水などと併せて
アルコール度数の高いお酒は胃への刺激が強く、血中アルコール濃度が速く上昇してしまいます。アルコール度数の高いお酒を飲むときは、水割りなどにしたり、水や炭酸水などアルコールを含まない飲み物と交互に飲むなどして楽しみましょう。
3急性アルコール中毒になったら?意識がない、呼吸がおかしい、そんな場合は直ちに救急車を!
もし一緒に飲んでいる人が次のような状態になったら、急性アルコール中毒の可能性があります。次のように対処してください。
反応がない場合は救急車を手配して
お酒を飲んで次のような症状になったときは、命にかかわるおそれがあります。すぐに119番に通報して救急車を呼んでください。
- 意識がない。ゆすっても、呼びかけても反応しない
- 全身が冷えきっている
- 呼吸がおかしい
- 大量の血や、食べ物を吐いている
- 倒れて口から泡を吹いている
酔いつぶれた人を介護するときは…
(1)一人にせず、誰かが必ず付き添う
必ずだれかが付き添い、一人にしないようにしてください。呼吸をしているか、脈があるかを時々確認しましょう。
(2)横向きに寝かせる(回復体位)
意識を失った場合、あお向けに寝かせていると、おう吐したもので窒息する可能性があるため、顔を横に向けて寝かせましょう(回復体位)。
おう吐しているときは、吐いたものをよく拭き取りましょう。なお、自分で吐けない場合は、無理に吐かせないようにしてください。
ネクタイやベルトをしている場合は、それらを外し、衣服をゆるめて楽にしましょう。
(3)体を温める
急性アルコール中毒になると体温が下がります。体温低下を防ぐため、上衣や毛布などをかけて保温しましょう。 意識がある場合は、水やお茶、スポーツドリンクなどを飲ませましょう。水分補給と血中アルコール濃度を下げるのに有効です。
(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)