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  • 小澤酒造のある御岳峡谷を流れる多摩川
  • 蔵に貯蔵される日本酒
  • 横井戸から湧き出る水(中硬水)
  • 小澤酒造の正門
  • 土産店では利き酒を楽しめる

July 2020

東京・青梅の豊かな自然が生む日本酒

小澤酒造のある御岳峡谷を流れる多摩川

東京郊外の自然豊かな青梅市にある老舗酒蔵は、清らかな水を使った日本酒造りと、その水を生み出す森を守る取組を続けている。

蔵に貯蔵される日本酒

東京都の西北部、都心の新宿から電車で約1時間の所にある青梅市は、面積の6割以上を森林が占め、豊かな自然に恵まれている。同市には多摩川が東西に流れており、観光やリクリエーションを楽しめる場所が数多くある。その一つ、秩父多摩甲斐国立公園(Highlighting JAPAN 2018年4月号参照)の一角にある御岳渓谷は、澄んだ川の流れ、川が侵食した大小様々な岩、そして、夏には濃い緑、秋には紅葉で染まる木々など、一年を通じて非常に美しい景観を生み出している。

この御岳渓谷沿いにおいて日本酒を造っているのが小澤酒造である。小澤酒造は1702年の創業で、現在、九つある東京都内の酒蔵の中で最西端に位置し300年余の歴史を持つ。小澤酒造の「澤乃井」は、国内外の日本酒コンクールで数々の賞を受賞した有名なブランドである。

横井戸から湧き出る水(中硬水)

「この地域はきれいな水が豊富なので、酒造りに適しています。私たちの日本酒の大きな特徴は、中硬水と軟水の2種類の水を原料にしていることです」と、2019年に23代目の当主となった小澤幹夫さんは話す。

中硬水は酒蔵の裏にある岩盤を手作業で約140メートルくり抜いて作った横井戸から、軟水は多摩川を挟んで対岸にある井戸からくんでいる。ミネラル分の多い硬水を使った日本酒は力強い味わいとなる一方、ミネラル分の少ない軟水を使った日本酒は、軽く柔らかい味わいとなる傾向がある。これら2種類の水を酒の品種によって使い分けることで、様々な味の日本酒を造ることができる。

小澤酒造の正門

小澤酒造は、多摩川沿いにレストラン、利き酒のできる土産物屋などの施設を設けており、日本酒と合わせて、地元産の食材を使った食べ物を提供している。その一つが、「わさび漬け」である。きれいな水と冷涼な気候で育つわさびは、江戸時代からこの地域の特産品となっている。わさび漬けは、わさびを日本酒をつくる過程でできる絞りかすの「酒粕」に漬けて作る。澄んだ川の流れを見ながら、日本酒とともに味わうわさび漬けのすっきりとした辛さは格別である。

小澤酒造は、小澤さんの祖父の代までは、豊富な森林資源をいかして林業も営んでいた。今でも、酒蔵の周辺に所有する広大な森林の管理を行っているが、それは酒造りのためという。森林に降った雨は地中に染み込んで浄化され、地下水となり、やがて酒造りに使う湧水ともなる。森林の荒廃は、日本酒の原料となる水にも大きな影響を及ぼすことから、そのたゆまぬ管理は欠かせない。

土産店では利き酒を楽しめる

「海外からここを訪れる方は、『東京にも、こんなに自然豊かな場所があるのか』と感動されます。この豊かな自然を守り続けることも、酒蔵としての役割であると思っています」と小澤さんは話す。

酒造りとともに、広大な森を守る取組が300年余の長きにわたって受け継がれている。