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INDEX

  • 台湾での岩手県のプロモーションイベントで和山アマンダさん(中央)と同僚
  • 盛岡さんさ踊りに参加したアマンダさん
  • 岩手の人々を紹介するアマンダさんのブログの画像
  • スイスでの「国際リニアコライダー」の会議にて
  • 岩手県が主催するイベントで通訳をするアマンダさん(右から2人目)

March 2021

岩手県人の魅力を紹介

台湾での岩手県のプロモーションイベントで和山アマンダさん(中央)と同僚

岩手県庁で働くアメリカ出身の和山アマンダさんは、東日本大震災に遭遇した経験や街の復興を伝えることで、地域のつながりの重要性を内外に発信してきた。今では、岩手県を自らの“ふるさと”として暮らしている。

盛岡さんさ踊りに参加したアマンダさん

2011年の東日本大震災から10年、太平洋に面した沿岸部に甚大な被害を受けた岩手県も、今では復興道路などのインフラが着々と整備され、高台への集団移転を進め、市街地の再整備がほぼ完了し、復興を遂げている。岩手県庁の職員として国際交流や情報発信を担う、アメリカ出身の和山アマンダさんは「震災時、岩手県は国内のみならず世界中から支援を受けました。岩手の人々はその感謝の気持ちを込めて、新型コロナウイルスの感染拡大が収束すれば、岩手に来る皆さんをおもてなししたいと思っています」と語る。青森県八戸市(はちのへし)から福島県相馬市まで全長1025キロメートルのロングトレイルとして完成した『みちのく潮風トレイル』(Highlighting JAPAN 2020年5月号参照) は、途中、岩手県を南北に貫き、森と山と海の大自然とそれぞれの土地の文化に触れることができる。例えば、そのトレイルの名所の一つ北山崎では、地元の漁師が操る「サッパ船」と呼ばれる小型船に乗ってリアス式海岸の断崖を間近に見ることができる。こういった自然を感じるとともに地元の人々とも交流する機会がもてる岩手県ならではの魅力的なアクテビティがアマンダさんのお勧めである。

岩手の人々を紹介するアマンダさんのブログの画像

もともと日本のアニメやゲームが好きだったアマンダさんは、大学生だった2007年に京都に短期留学し、その時の体験で「日本での生活は自分の個性に合う」と感じたのだと言う。彼女は地方公共団体が国際交流等のために海外の青年を招待する日本政府の事業「JETプログラム」に応募し、2009年に岩手県庁に配属となった。

岩手県のことはそれまで全く知らなかったアマンダさんだが、SNSを活用し、海外向けに岩手県の豊かな自然や歴史、文化の情報を発信したり、アメリカと岩手県の相互交流にやりがいを感じるようになった。そのさなかに、東日本大震災に遭遇した。アマンダさんが住む県都盛岡市は大きな揺れはあったものの比較的被害は少なかった。しかし、次第に県内の被害の状況が伝わり、沿岸部では多くの街が津波に飲み込まれていたことを知る。アマンダさんは県内のラジオ局を回って英語のアナウンスを請け負うなど、救援活動を行った。その時の気持ちを「私の“ふるさと”のために何かできることはないかという一心でした」とアマンダさんは振り返る。

スイスでの「国際リニアコライダー」の会議にて

アマンダさんは、5年のJETプログラムが終了した後も、引き続き岩手県庁で働くこととなった。海外から単身岩手に来たアマンダさんを温かく見守ってくれた人たち、震災時に支え合った人たち、そして結婚相手にも岩手で巡り合った。「岩手県の最も大きな魅力は“人”にある」と感じていたアマンダさんは、県の新たな発信として、ブログ『PEOPLE of IWATE』を2017年に立ち上げて、震災からの復興に立ち向かう岩手の人々を紹介することとした。ブログ上では、古着を裂いて新しい布を織る東北の民芸「裂き織り」の会社を立ち上げて、障がいのある方々を雇用して地元に貢献する盛岡市の女性(Highlighting JAPAN 2014年1月号参照)、あるいは、自身も津波に遭った辛い記憶を負いながら、防災の意義を伝えるツアーを開催している宮古市の女性など、アマンダさんが実際に会って感銘を受けた岩手の人々が紹介されている。

「去年(2020年)4月からは国際事業の部署を離れることになり、観光・プロモーション室に異動し、岩手公認VTuber「岩手さちこ」など、県外向けプロモーションを担当している。新しい部署ではより深く岩手県のことを知り勉強ができるので、自分の可能性が広がるだろうと楽しみにしています」とアマンダさん。

岩手県が主催するイベントで通訳をするアマンダさん(右から2人目)

彼女のもう一つの任務は、国際的な素粒子実験施設「国際リニアコライダー」を岩手県南部から宮城県北部に走る北上山地への誘致実現をサポートする仕事である。「実現すれば、東北・北上山地が、世界トップクラスの研究者・技術者数千人が10年、20年と研究を続ける国際研究拠点となるでしょう。私としては、誘致に向けての活動の中で、岩手県の魅力についても是非、世界中の人に紹介したい」とアマンダさんは抱負を語る。